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神がCabernet Sauvignonを創り、悪魔がPinot Noir を創った・・・・
 

ワインの帝王
ロバート・パーカー

2007.6.21

 

最近、昨年暮れに刊行された「ワインの帝王 ロバート・パーカー」(エリン・マッコイ著 立花峰夫・立花洋太訳 白水社) を読みました。

 

私個人としては、ワイン業界内におけるロバート・パーカーという存在に対してはある意味、アンチな立場なのですが、その及ぼす力の大きさは決して無視できるものではなく、一読する価値もあろうかと思い読破しました。

 

この書、ロバート・パーカー氏と25年来の付き合いのあるベテランワインライター、エリン・マッコイ女史による評伝です。
前半では、一介のワイン好き(オタク)であった男が、世界中のワインの価格に対して唯一無二の影響力を持つようになるまでの時代背景をも含んだ経緯が書かれており、後半ではその具体的な影響力、社会現象、氏を取り巻くさまざまな事柄が描かれてます。

 

そのサクセス・ストーリーはいかにもアメリカ的で、世界情勢における「超大国アメリカVSその他各国」的な縮図がワイン業界にも見て取れます。
世界のワイン市場全体に占める米国市場の巨大さを考えれば、この国からそのような権力者が生まれたのはある意味必然であったのは理解できます。

 

しかし、その人物がロバート・パーカーでなければならなかった明白な理由、特に氏のカリスマ性に関しては、残念ながらこの本を読む限りでは伝わってきません。

 

原因としては、その「類稀な」と言われるテイスティング能力を文章で伝えることの難しさもあるでしょうし、しいてはやはり、「氏と私との趣向の違いの溝が埋まらなかった」ということが言えます。(パーカーは1996年以降、私の愛するブルゴーニュワインの試飲評価を、諸々の事情により、他のスタッフに任せている)

 

ただひとつ、ワイン評論家として非常に評価したい姿勢が、パーカーは公にワイン評論を始めてから現在まで、いわゆる業界から独立したクリーンな立場を貫いているということです。

 

パーカーが発行しているワインガイド「ワイン・アドヴォケイト紙」にはワイン業界からの広告は一切掲載されませんし、試飲の為のワインも基本的には自分で購入していると言います。(無名の生産者からの「売り込み」によるサンプルが山ほど送られてくるらしいが)
又、各生産地で生産者達と食事をしたりする時も自分の分は必ず払うといいます。

 

ワイン評論家の中でそのような姿勢を貫いているのは唯一であるとは思いません。しかし、もう20年以上も「帝王」として世界的に支持されているのはパーカーのそのような真摯な人間性によるところも大きいと思われます。

 

 

それにしても、読み終わって思うのは「パーカー後のワイン業界はどうなってしまうのか?」ということです。

 

氏は今年の7月に還暦を迎えます。

テイスターという職業が非常にデリケートな感覚を要求されるということを考えれば、「もうそろそろ引退・・・」ということも充分あり得るのですが、一般論として、パーカーの後継者はいないし現れないだろうと言われています。

 

ワイン業界にとって、「パーカーの引退」=「市場原理の抜本的な変革を迎える」ことを意味します。

 

ということは、いわゆる「パーカー的なワイン」が廃れ、リバウンド現象として、私の愛する「冷涼な地域のエレガントで透明感があり、奥行の深いワイン」が世界的ブームになるということも・・・・・・・・


楽しみです。

 

 

それでは、又。

   
Profile
Manager Sommelier
田中 浩 Hiroshi Tanaka
 
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